リスクからレジリエンスへ:ビジネス変革力の強化 

Written by SAP Signavio Team | 2 min read
Last modified: June 19th, 2025
From risk to resilience_ strengthening your business transformation capability

自分の家に住みながら、構造健全性も確認しないまま、いきなり改築を行うなんてことはあるでしょうか?壁内の配線や床下の配管がどうなっているか把握しないまま間取りを変更する人はいないでしょう。ところが、これが多くの組織で行われているビジネス変革のアプローチなのです。そして結果は、当然厳しいものになります。  

SAP が Oxford Economics 社とともに実施した最新の調査によると、ビジネス変革のうち、計画どおりに進んでいるものはかろうじて半数 (51%)、投資に見合った価値を実現しているものはわずか 57% でした。リーダーの 73% が、チームが持つ変革リスクの管理能力に自信を持っていると回答していますが、半数以上 (52%) は初期のリスク評価を省いています。これでは、回避可能な不測の事態や失敗に対して脆弱なままです。また、43% は、変革が進むにつれてリスクを監視できなくなっています。この意欲と実行のギャップは「自信のジレンマ」と呼ぶことができます。 

このギャップの意味を解明するために、変革の取り組みの成功を左右する 3 つの重要なリスクを見ていきましょう。 

1. 組織運営上のリスク 

多くの場合、人的要素は、ビジネス変革における最大のリスクです。あらゆる職務の全員がその変革についてどれほど理解し、支持し、受け入れるかによって、その変革の成功が決まるからです。実際、この調査によると、ビジネス変革の 63% は変革のメリットが明確でないことによって、変革を支援すべき経営陣からの賛同が得られないという壁にぶつかっています。  

変革への抵抗は組織全体に及ぶ場合もあり、61% が、従業員を新しい働き方に移行させることの難しさを報告しています。コミュニケーションのパラドックスも発生しています。5 社中 3 社が変革の計画を従業員に幅広く明確に示したと主張していますが、そもそもこれらの計画を明確に定義したという回答が 53% にすぎません。 

2. プロセス、テクノロジー、データのリスク 

俊敏性の欠如により、変革の取り組みを改善できるシステムを導入していないとした回答者が 40% に上るのは驚きです。この能力のギャップは、変革のための主要ツールが十分に浸透していないことに表れています。変革用ツールの導入が初期段階を完了している組織は、変更管理ツールで 49%、ベンチマーキングツールで 42%、プロセスマイニングソフトウェアで 36% と半数以下です。このような機能がなければ、組織は現在のプロセスを中断したり、重要なシステムの状態を見失ったり、さらに悪くなるとサービスが広範囲に停止するリスクがあります。この技術的側面を軽視することは、暗闇の中で変革を進めるようなものです。 

データリスクも考慮すべきです。回答者 10 人中 7 人が、変革に必要なデータが信頼できるかどうか判断するのは「とても困難」または「きわめて困難」だと感じています。これは通常、不適切なデータガバナンスフレームワーク、および組織全体でのデータの収集・管理・使用方法の透明性の欠如が原因です。ビジネス変革の取り組みに関連するデータおよび意思決定について、経営陣が従業員に対して透明性を確保していると回答したのは 52% のみです。 

3. プロジェクト実行のリスク 

最後のパラドックスはプロジェクトの実行についてです。リーダーの 67% がリスク評価が重要だと考えていますが、変革の取り組み全体でリスクを監視しているのは 57% にすぎません。また、69% が、リスク管理 KPI をある程度しか使用していない、あまり使用していない、またはまったく使用していないことを認めています。このような場合、変革対象範囲は膨らみ、優先順位は一致せず、取り組みは計画から逸脱します。その結果、変革の 58% が予算を超過し、収益、顧客満足度、市場機会を獲得する前に約半数が行き詰まっています。 

ビジネス変革のリスクを軽減する 4 つのアプローチ 

組織運営、テクノロジー、およびプロジェクト上のリスクによって変革が失敗する流れを見てきましたが、このような状況を回避するには、人、プロセス、アプリケーション、データ全体を可視化する包括的アプローチが必要です。可視化の方法は以下のとおりです。 

1. 人:抵抗を成果に変える 

重要なことから始めます。まずは、戦略的ビジョンと日常業務を結び付ける明確な目標を定めます。人間の知見と、信頼性の高いデータを組み合わせる意思決定フレームワークを構築します。問題を早期に発見し、進捗の透明性を維持するコラボレーションとコミュニケーションのチャネルを用意します。計画の早い段階で、オンボーディングとトレーニングのステージを組み込みます。導入ステージでの連携の欠如、摩擦、不確実性は、変革を遅らせるだけでなく、変革の失敗につながる可能性があります。人的側面は、後から追加するのではなく、取り組みの戦略的要素とします。 

2. プロセス:実際の作業の流れを理解する  

まず、非公式の回避策も含めて、すでに存在しているものをマッピングします。次に、これらのプロセスがどこにつながっているか判断し、組織全体の重要な依存関係を明らかにします。その後、中断を許容できないプロセスを特定し、ライブオペレーションに影響を及ぼす前にシミュレーションを行い、変更をテストします。プロセスの変更を戦略的目標と価値創造に結び付ける明確な指標により、進歩を妨げるのではなく実現させるガバナンスフレームワークを構築します。レビュー、介入、エスカレーションの明確なトリガーを利用して、パフォーマンス監視を自動化します。 

3. アプリケーション:テクノロジーランドスケープをマッピングする 

まず、現在のテクノロジーランドスケープの全体像を把握します。現在存在する要素(シャドウ IT を含む)と、そのつながりおよびビジネスへの影響までを範囲とします。このように企業全体を可視化して、冗長性、統合ポイント、技術的債務を特定します。テクノロジーの導入を戦略的に計画し、追加されるテクノロジーによってアーキテクチャーがただ複雑化するのではなく、強化されるようにします。段階的な導入により、基盤を最新化しながら事業継続性を維持します。 

4. データ:重要なものを監視する 

データの量が増えるほど、信頼できる情報が増えるとは限りません。データの収集は重要ですが、それらを理解できなければ意味がありません。業務データをビジネス成果に直接つなげるフレームワークを構築し、変革の進捗と実際に実現した価値の両方を追跡できるようにします。データを受動的リソースではなくアクティブな資産として扱い、リスク管理を防御のための活動から、ビジネス変革の積極的な推進要因に変えることができます。   

リスク管理:可視性をスピードに変える 

リスク管理は変革のブレーキではなく、アクセルです。組織は、そのエコシステム全体――従業員、プロセス、アプリケーション、データ――を可視化することにより、確信を持って目的に向かうことができます。急速に変化する今日の環境では、このような戦略的アプローチでリスクに対処することで、組織は停滞と無謀なスピードの両方を回避できるようになります。このことを理解している組織は、変革を安全に推進できるだけでなく、なかなか動けなかったり、むやみに先を急いだりする競合他社よりも変革に成功しています。 

ビジネス変革:リスクからメリットへ 

これからのビジネス変革が失敗例のひとつにならないように、SAP のガイド「The confidence conunundrum:Naviging risk in business transformation(自信のジレンマ:ビジネス変革のリスクを乗り越える)」をダウンロードして、以下の内容をご確認ください。 

  • 変革の意欲と実行のギャップ 

  • 変革のリスクを特定し、管理するための実用的なフレームワーク 

  • ビジネス変革の取り組みからリスクを取り除くために欠かせない機能 

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Last modified: June 19th, 2025